東海大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科
新倉 直樹
東海大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科
新倉 直樹
JBCRG-M07(FUTURE)試験
本試験は、ホルモン感受性のある進行・再発乳がん患者さんで、フルベストラント単剤の治療を行っている方の病勢が進行した場合に、パルボシクリブの上乗せ効果を検証しようとする研究です。
パルボシクリブは、病気進行の勢いの強い患者さんにとって進行を遅らせる効果が期待できる新薬ですが、値段が高価であり、そして若干強い副作用が生じることもある薬のため、一律すべての患者さんに強くて高い薬を処方するよりは、より確実に効くという確証のもとに処方するのが患者さんにとってもよいのではないか、と考えました。
そのため、本試験では、フルベストラントによる治療後に病勢進行した方に、パルボシクリブの治療を開始する前、治療中、治療後の血液検査を行い、血中の遺伝子変異を検討することで、どのような遺伝子変異を持つ患者さんが薬剤に対してより適応するのかを解明したいと考えています。
治療効果の高い患者さん、低い患者さんのそれぞれの要因を遺伝子レベルで調べることで、効果の低い要因を遺伝子に持っている患者さんは、その治療を行わないという選択肢を持つことができ、薬剤からの不要な副作用を回避することができる可能性があります。
これからは、血液検査等の簡単な方法で、がんに関係のある遺伝子を特定し、その遺伝子の情報を基に最適な治療や薬剤を選べる時代になると信じています。
本試験を通じて、日本から乳がんのトランスレーショナル研究(基礎研究と臨床の橋渡し研究)の成果を世界へ発信し、血液中の遺伝子やタンパク質等のちょっとした違いによって受ける治療が変わってくる、そんな医療の未来(FUTURE)をつくる一助となればと思います。