研究を知る

〜臨床研究のSTORY〜

JBCRG-ABCD project試験

相良 安昭

社会医療法人博愛会 相良病院

相良 安昭

JBCRG-ABCD project のご紹介

 

近年、進行・再発乳癌の患者さんの治療開発が進み、日本でもさまざまな治療を選択できるようになってきましたが、その患者さんの治療の実態や、全国的な傾向がどうなっているかを調べたい、となったとき、日本にはまだ標準化された進行・再発乳癌のデータベースが整備されていない、という状況がありました。

 

進行・再発乳癌の患者さんの治療情報は、各医療機関など、小さな集団で共有されているのみで、治療選択肢が増えているにもかかわらず、それがいったいどのように治療として患者さんに提供されているか、また、患者さんがその治療をどのくらい続けることができたか、等、全国的な実態調査ができなかったのです。

 

そこで、私たちは、日本で初めて、一元化された情報収集を行うことのできる進行・再発乳癌のためのデータベースを構築し、それを、JBCRG-ABCD(Advanced Breast Cancer Database)プロジェクトと名付けました。

このプロジェクトで集積したデータは、個人を特定できない形で収集され、以下の目的で利用されます。

 

1. 国内の研究者に臨床情報を提供し、進行・再発乳がんに対する最適な治療法を明らかにするためなどの臨床研究を行う

2. 多施設における治療施行状況と治療効果等の臨床情報を参加施設の医師に提供し、最適な治療方法をフィードバックする体制を構築する

3. 進行・再発乳がんの臨床試験とデータベース内の情報を結合し、その情報を長期的に利用できるように整備・保管する

4. 開発中の新しい薬の効果を明らかにするための治験や、新しい治療法の有用性を明らかにする臨床試験に関する情報を、医師に提供する

5. 治療薬・検査測定機器が適切に使用されているかなどを検討することを目的に、国内の医療関係機関(民間企業等を含む)に、治療薬や検査に関する臨床情報の集計データ等を提供する

 

多施設における進行・再発乳癌の治療の実態や治療効果の情報を参加施設へフィードバックすることよって、現在治療を受けられている患者さんにも、最善の医療を提供することが可能になると考えています。

 

このプロジェクトは、今後、進行・再発乳癌の予後改善を目的とした研究の活性化に繋げていくことを目的としたものです。

全国の研究者や臨床医とコラボレーションし、貴重な臨床情報が、将来のよりよい治療のために有効に活用されるように取り組んでいく予定です。

この研究の詳細はこちら