研究を知る

〜臨床研究のSTORY〜

JBCRG-ABCD project試験

新倉 直樹

東海大学医学部付属病院 乳腺内分泌外科

新倉 直樹

JBCRG-ABCD project のご紹介

 

日本のがん登録からの推計では、毎年、新しく乳がんに罹患する患者さんが10万人いることがわかっています。その多くは、早期発見・早期治療により「治りやすい」乳がんとされていますが、10%程度は、「治りにくい」とされる進行乳癌として発見されるか、または再発乳癌になると考えられています。

その人数は年間約1万人と推定されています。

 

現在の日本のがん登録では、そのような患者さんが毎年何人いるのか?何人の人がどのような治療を受けているのか?を、ほとんど把握できていません。

そこで私たちは、全国的な調査が可能な「進行・再発乳癌のためのデータベース」を作り、全国で治療を受けておられる進行・再発乳癌患者さんの臨床情報を収集することができないか、と考えました。実態調査は、現在の課題を洗い出し、未来のよりよい医療を生み出すための、重要な基盤となるからです。

 

JBCRGでは、これまで進行・再発乳癌の臨床研究をいくつも行い、この「治りにくい乳がん」を理解しようとしてきました。

しかし、それらの研究は、一部のお薬を使用している患者さんに研究対象が限定されていたり、研究の予算や期間が限定されていることで、患者さんの5年後や10年後、対象のお薬が効かなくなってからの治療をどのようにしたのか等、「患者さんのその後」を知ることに対する制限がありました。

 

しかし、このプロジェクトにご参加いただければ、過去に参加した研究が終了しても、患者さんが生存されている限り、患者さんの臨床情報を継続的にデータベースに登録することができます。

患者さんの貴重な情報はデータベースの中で生き続け、未来の研究のために活用されることができるのです。

 

また、現在はまだ参加施設の研究者・医療者の協力を得て、患者さんの情報を収集している段階ですが、今後は、さらに発展的に、スマートフォンアプリやWebを経由して、患者さんご自身が直接、自分の情報を登録できる、参加型のデータベースに育てていけたらとも考えています。

 

本プロジェクトでは大きなデータベースプラットフォームを作ることで、日本における進行・再発乳癌の実態を把握し、過去に行った臨床研究のデータも取り込みながら、患者さん一人一人のデータを大切に活用し、後世に続く進行・再発乳癌の治療をより良いものにしていくことを目的にしております。

 

是非、国内のさらに多くの医療機関に本プロジェクトにご参加いただき、多くの患者さんのご参加・情報登録を得て、みなさんと協力して日本一のデータベースを作り上げていけたらと考えています。

 

みなさんのご協力をよろしくお願い申し上げます。

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