研究を知る

〜臨床研究のSTORY〜

JBCRG-C09 (OPTIMAL)試験

川口 英俊

松山赤十字病院

川口 英俊

皆さん、はじめまして。みかんで有名な松山市にあります、松山赤十字病院に勤務しています。毎日患者さんとタッグを組み試行錯誤し、にっくき乳癌と戦っています。

 

さて、この度オラパリブというお薬の観察研究であるJBCRG-C09(OPTIMAL試験)の研究代表者を務めることになりました。観察研究とは、研究に参加される患者さんに対して研究者が、治療や指導などの介入をすることなく治療に関するデータを集め、その詳細を分析することによって、新しい知見を得る研究のことです。

 

オラパリブは、BRCA遺伝子異常を有する遺伝性乳がんの治療薬です。進行・再発乳癌の患者さんを対象としたオラパリブの第III相試験(治験薬の有効性を調査します):OlympiAD試験という、海外の試験での結果を得て、BRCA遺伝学的検査及びオラパリブが2018年7月より保険適用となり、約5年が経過しました。しかし、本邦の実臨床でのオラパリブの治療成績の報告は少ないのが現状です。また、OlympiAD試験に参加している日本人は24例のみであり、そのうち、オラパリブ投与例は15例に過ぎません。

 

オラパリブの日本の実臨床における有効性と安全性のデータを明らかにし、OlympiAD試験結果の外的妥当性(特定の研究成果について、別の集団に当てはめた場合でも同様の結果を得られるか、つまり、一般化できるかの程度)を検討することによって、我々の日常臨床でオラパリブをより効果的により安全に利用することができるようになると考え、本研究を立案しました。

 

 Olaparib treatment in metastatic/advanced breast cancer patients using real world data in Japan (OPTIMAL )のOPTIMALは「最適な」という意味です。治療法が進歩しても未だ進行・再発乳癌の根治は困難です。「最適な」治療という言葉はふさわしくないだろうと思われる方もおられるかも知れません。しかし、我々は必要な遺伝子検査を行い、患者さんにとって現時点で「最適な」治療を探っていきたいという思いで名づけました。

 

皆さんが経験された治療の結果を、これからオラパリブ治療を受ける患者さんの治療方針につなげる事が出来るよう誠心誠意努力する所存です。試験の参加にご協力頂けましたら幸いに存じます。

この研究の詳細はこちら